スリランカのギター教育についてと国立音楽大学での講習会
2025年3月、スリランカを訪れ、国立音楽大学におけるクラシックギターの講習会と、コンクール開催という二つの活動を行いました。南アジアの島国スリランカにおいて、西洋音楽は我が国と比べると、まだ限られた環境の中で育まれています。そのような中で、クラシックギターという楽器がどのように受け止められ、どのような広がりを持ちうるのか。
育、コンクール、演奏会という三つの異なる場を通して体験したことを、今回あらためて振り返ってみたいと思います。

まず最初に行ったのは、国立音楽大学でのギター講習会でした。4日間にわたり、ギターを専攻する約30名の学生に向けて、レクチャーと個人レッスンを行いました。スリランカの国立音楽大学では、学費が無償であることもあり、ギター専攻には比較的多くの学生が在籍しています。ギターはクラシックに限らず、ポピュラー音楽や伝統音楽とも結びつきやすく、将来的な選択肢の広さという点でも、人気の高い楽器であるようです。

一方で、クラシックギターの奏法や練習方法については、体系的に共有されているとは言い難い状況でした。多くの学生が自己流で演奏を続けており、基礎的なフォームや音の作り方についても、十分に整理されないまま学習を進めている様子が見受けられました。それでも、こちらの説明に真剣に耳を傾け、一つでも多く吸収しようとする集中力は非常に高く、限られた環境の中で音楽に向き合ってきた切実さのようなものを感じました。そこで強く印象に残ったのは、演奏技術以前にある「学ぼうとする姿勢」でした。
短い期間ではありましたが、爪の作り方や基本的なエクササイズ、日々の練習への向き合い方など、演奏の土台となる部分を中心に伝えることを心がけました。
また、講習会の最終日には、私自身の演奏と学生たちの演奏を含むコンサートも行われました。
大学内に併設された講堂での開催であったためPAを使用し、音響条件は必ずしも理想的とは言えませんでしたが、可能な限りギターの生音を体験してもらいたいと考え、一部の曲ではあえてアンプを使用せずに演奏しました。クラシックギターの魅力の一つである”生”の音色。彼らにとってはまだ生音でクラックギターを聴くという経験が少ないのです。
この経験が、彼らにとって何かしらの「基準」や「きっかけ」になってくれればと願いながら、講習会を終えました。演奏に際しては日本を代表する名工「桜井正毅 喜寿モデル」を使用する機会に恵まれました。また私の演奏の後には学生たちによるアンサンブルの発表もありました。


我が国に目を向けると、音楽大学におけるギター専攻の学生数は、1学年に数人というケースも珍しくなく、決して多いとは言えない状況にあります。少子化や進路の多様化など、背景にはさまざまな要因がありますが、クラシックギターが専門教育の中で占める位置づけは、年々限られたものになりつつあると感じています。
そうした現状を踏まえると、スリランカの国立音楽大学において、ギター専攻に比較的多くの学生が集まっているという事実は、非常に印象的でした。演奏水準や教育環境には違いがあるものの、「ギターを学びたい」と考える若い世代の数そのものは、必ずしも我が国より少ないわけではありません。
この対比は、今回の滞在を通して、環境が整っているかどうかと、音楽への関心や意欲の大きさは必ずしも比例するものではないのではないか、という一つの問いを私の中に残しました。








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